2015年

6月

28日

解説スライド@ぱすてる学習会『当事者と家族 —— 「もうちょっとうまいやり方」へ』

2015年6月28日の「ぱすてる学習会」で、導入のための話題提供をしました。 そのときに用いたスライドをPDFに加工し、サーバーに保存しました。

20150628 ぱすてる学習会 スライド ver3.pdf
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2014年

11月

23日

解説スライド@ぱすてる学習会:「当事者の世界」と「家族」

2014年11月23日の「ぱすてる学習会」で、私からの問題提起として、短いお話をしました。 そのときに用いたスライドをPDFに加工し、サーバーに保存しました。

20141123 ぱすてる学習会 矢野 スライド.pdf
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2010年

7月

29日

色覚検査と「差別」について

【質問】 色覚異常が差別であるととの認識が広まりつつあります。色覚検査と言えば石原式でしょう! そもそもあの本で正確な色覚が判断できるのでしょう か? シンプルに信号が見えるかとか現実的な試験のほうがよいと思います。色覚異常者が就職や進学で道を絶たれることはあってはなりません。そもそもなぜ 石原式が基準なんだ?(Yahoo知恵袋より)

【回答】 これはご質問ではなく、ご意見ですね。このご質問には複数のご意見が含まれていますので、それぞれ分離させて回答させていただきます。

(1)色覚異常は差別か
色覚異常は身体の特性であって、差別ではありません。したがって、健康診断によって色覚異常を発見することも、差別ではありません。なお、色覚異常という身体特性が社会的な差別に繋がるような現象を指して、その社会現象に対して「差別である」と言うことはできるでしょう。

(2)色覚検査はどのような方法であるべきか
検査は目的にあった方法で行うべきです。色覚異常の発見が目的であるなら医学的な方法で行うべきで、仮性同色表を用いることは間違っていません。しかし、進学や就職に関しては支障の有無の発見が目的でありますから、仮性同色表の結果 "だけ" をもって判断するのは間違いであるということになるでしょう。

(3)色覚検査の標準的な方法が石原表であるのはなぜか
石原表が高精度であることが国際的にも評価されており、かつ、使用方法が簡便であるからです。

(4)石原表で正確に色覚が診断できるか
色覚異常の確定診断は、石原表だけでなく、アノマロスコープを含めた複数の検査の結果をもって総合的に判断しなければならないとされています。

(5)色覚異常者が就職や進学の際に道を絶たれることは許されないのではないか
色覚異常には先天色覚異常と後天色覚異常がありますが、いずれも個人差が大きいものです。そのすべてをひっくるめた「色覚異常者」というカテゴリーに対して制度の是非を語るのは無理があるでしょう。個人個人の能力を見極めた上で進路適性に関する制度を考察するべきだと思います。

 

2010年

7月

13日

クルマは「走る凶器」です。

先日、自動車運転免許の更新手続に行ってきました。前回の更新時は色名応答テストがありましたが、今回はなくなっていて、視力検査だけでした。この画像を見ていただきますと、「ただし書き」の部分は後から貼ったものであることがお分かりになるでしょう。

更新時に色覚を問わないということは、後天色覚異常を疑っていないのです。加えて、遠近や視野の検査も行いませんでしたので、要するに、中心視力以外の視機能は問わないということになります。

となると、あとは運転者自身の自覚に任せるということになるわけですが、本当にそれでよいのでしょうか。人は、自身の視機能を正確に自覚できているのでしょうか? 眼科の文献を読むと必ずしも自覚できているとは言えないようなのですが、どうお考えなんですかね、警察のみなさまは。

以下余談。

知人に、自身の先天色覚異常を悪用して商売を展開している低能な男がいます。彼は、先天色覚異常以外にも視機能のインペアメントをいくつか持っていて、それでも運転ができるなどと豪語しています。

しかし、視機能より性格の方が問題になりそうな、非常に傲慢な男です。交通環境の安全のために、彼は「適性検査」で落とされるべきだと願っております......(泣

 

2004年

3月

22日

微妙な色の判別

こないだ「はなまるマーケット」を観ていたら、おいしいピーマンの選び方、っていうのをやっていました。なんでも、ヘタが6角形で全体に赤みがかったのが、甘くて美味しいんだそう。

TVに映るふたつのピーマン・・・ わからんっっっ! (放映中にブラウン管を複写したので、画像が汚くてすみません)

・・・残念。

 

 

2004年

3月

09日

電話相談日誌

午前中、小学校入学直前の息子さんを持つお母さんからお電話がありました。「以前より、息子の言動が気になっていた。インターネットで調べていて、いろいろな事例に目を通すうち、息子が色弱であることを確信した。これからどうしたらよいのか」というご相談でした。

このお母さんは、息子さんのようすを注意深くご覧になっています。たとえば⋯

   学芸会で使った動物(着ぐるみ?)の舌を「ミドリ」と呼ぶ
   先生が着ていた深緑色のセーターを「グレー」と呼ぶ
   木の葉は緑色だと教えたら幹まで「ミドリ」で塗る
   大理石タイルを遊び歩きしながら「ミドリのところだけ踏む!」と言う

⋯などです。 

ふつうの人は「こんな極端な間違いを見逃す親はいないだろう」とお考えかも知れませんが、意外にも、こういったことを見落として育ててしまう親は多いのです。実際、「成人して就職の際に検査するまで自身の異常に気付かず、周囲からも指摘されなかった」という方も、かなり多くいらっしゃいます。

ですので、このご相談のお母さんは、なかなか子育てをしっかりがんばっていらっしゃる方なのだろうとお見受けします。こういう方のご家庭の場合は、精神的にはだいたい大丈夫。知ってしまったいま、すこし動揺していらっしゃるかもしれませんが、落ち着きを取り戻せば、きっと大丈夫。

ちなみに、「昨年11月の就学前検診で色覚の検査はなかった」と、おっしゃいます。そうなのです。近年は、あまり実施されていないのです。検査してイケナイわけではないのですが(この、検査関係のおはなしについては、また後日)。

閑話休題。

まずさしあたって重要なのが、小学校への対応です。まず担任の先生に事情を言って、配慮をしてもらうようお願いしておくのがいいでしょう。といいますのは、小学校低学年の場合、まだ語彙が少ないので、色の名前で指示することが多いからです。板書の色使いにも、トラブルはつきものです。

低学年ですと、教科書や教材にもたくさんの色が使われています。これも、まだ語彙が少ない、というのが理由です(中高学年になると字と図版が増え、色使いだけでなにかを指示させるような表記は減ります)。教材が配られたら、ざっと色の確認をしましょう。私の母は、磁石つきのちいさなオハジキひとつひとつに「アカ」「アオ」「ミドリ」「キイロ」と、手書きのシールを貼りました。が、そこまでやらなくてもいいんじゃないか、とも思います。子どもさんと「これはアカ!」とかやって、遊びながらでいいんじゃないでしょうか。

色がわからないからって、叱っちゃダメですよ。しょうがないんです、まだちいさいから。もうすこしおおきくなったら知恵がつきますので、気にしないで。この方の息子さんはポケモンが好きで、なのにお絵描きしても「よくわかんないから」といって色を塗らないのだそうです。子どもにとってお絵描きは楽しいもの。せっかくのチャンスですので、まず子どもさんの好きなキャラから、ちょっとずつ塗り絵しましょうよ。あわてないで、ひとつずつ、楽しみながら。

同じお母さんからもうひとつ、「息子に色弱だということを教えるのはいつがいいですか?」というご質問。これはとても難しいですね。考え方はふたつ、両極端なやりかたがあると思います。

(A)ひとつめは、子どもさんが自分で気付くまで教えない、というやりかた。色の間違いをしたときだけはちゃんと教えて、それが異常だとか遺伝だとか特定の進路はダメだとか、そういうのは一切教えないで放っておく。その方がノビノビ育つから。

(B)ちいさいうちから「あなたは色の見え方がほかのひとと違うのよ」とわからせて、すこしずつ色使いの工夫を覚えさせていく。将来の夢を具体的に語るようになったら、資格制限や職業適性などのこともすこしずつ教えていく。そのほうが失敗がすくないから。

これらの両方ともにデメリットがあります。(A)は、色間違いや人間関係の失敗が多くなり、子ども自身が恥をかき、色使いの経験不足に陥りやすくなり、進路決定が遅れる。(B)は、色に対する自信がなくなり、ときには思慮深くなり過ぎ、自分を責めてしまうこともあり得る。

どちらがいいのか? それは、家庭ごとに方法が違っていて、それでよろしいんじゃないでしょうか。

私の親がとった方針は(B)で、それが私には得だったと感じています。たしかに一時的に自信はなくなりますが、それを乗り越えてしまうと、色を扱うのがとても楽しい。自分にわからない配色に出会った時でさえ、「あれ、これ○○色なの? そりゃすごいねー!」という感じで、けっこう喜んで、ついはしゃいでしまいます。そしてその結果、いま、色を扱う仕事に就いているわけです。まぁ、私みたいなのは例外だといわれれば、たしかに、それまで。

ところで、ウチは(A)タイプだといって、親は知らん顔でいいのか?というと、私はそうは思いません。

子どもの体のことを詳しく知っておくのは、親として最低限の義務なのではないでしょうか。例えば、「予備知識なくいろいろ食べさせていたらひどいアレルギー体質になってしまった」というのと、「赤ちゃんのうちにアレルギー傾向を調べて気を使っていたから大きな問題を起こさなかった」というのと、どちらが親として優れているのか。

大人になってから自身の色覚異常を知り、「なんでウチの親は隠していたんだ!」と問いつめられてしまうと、親御さんとしては苦しいところです。色の間違いをタブーにせず、それも家族共有の話題の一部だと思って、楽しくコミュニケーションしていったらいかがでしょうか。(所要1時間)