先天色覚異常シミュレーションツールの宿命

けさの天声人語を読んで思う。マイノリティの闘うべき相手は、「世間の無知」と「想像力の欠如」なのだということを。

ここ数年ずっと気がかりなのは、先天色覚異常の「シミュレーション」ツールの存在。 PCソフトもあれば、サングラスのようなものもある。 こういったものが「世間の無知」や「想像力の欠如」を解消する手段となるなら、歓迎したい。

 

だが、私が気がかりなのは、その逆の方向に用いられている様子が見て取れるからだ。 たとえば、インターネット上の掲示板には頻繁に先天色覚異常の「シミュレーション」画像が貼付けられ、「色盲の見ている世界がキモイ」といった書き込みが繰り返されている。 先天色覚異常「シミュレーション」ツールの存在によって、かえって「世間の無知」や「想像力の欠如」が助長されていると言ってよいだろう。

 

こういった状況は歓迎できない。 どころか、先天色覚異常を抱える当事者の闘うべき相手である。 そしておそらく、先天色覚異常「シミュレーション」ツールの製作者たちにとっても、好ましくない状況であろうと思われる。 現状のままでは、先天色覚異常「シミュレーション」ツールは新たな障害カテゴリーを生み出す装置となるだけである。

 

先天色覚異常「シミュレーション」ツールが、「世間の無知」や「想像力の欠如」を解消する手段となるような道筋は立てられるのか。 これを早急に議論しなければならない。